認知症の家族を介護した経験を持つ人は、「明日はわが身か」と不安を感じているかもしれません。はたして認知症は本当に遺伝するものなのでしょうか?
左が正常な人の脳のMRI 画像です。右がアルツハイマーの人のものですが、脳に萎縮が見られます。また、矢印で示した「海馬」の萎縮が明らかです。
このようなアルツハイマー型認知症が遺伝するのかどうかをめぐり、これまでさまざまな研究が行われてきました。
ある病気が遺伝するかどうかを調べる方法の1つに、一卵性双生児の一致率というものがあり、一卵性双生児が同じ病気にかかる率を目安に、その病気が遺伝性のものか判断する方法です。
これによるとアルツハイマー型認知症は、国際的なデータで43%の一致率であるとの報告がなされています。遺伝病といわれている病気の場合、この一致率は80%以上であるので、アルツハイマー型は「低い」といえます。
一方、脳血管性認知症の原因となる「脳卒中」も遺伝病ではないため、「認知症は遺伝する」というのは真実ではないといえます。
しかし病気というのはどんなものであれ、遺伝因子と環境因子がかかわりあって発症するものであるため、大切なことは、やみくもに恐れて不安になるのではなく、日常生活を見直し、できる限りのリスクファクターを除く努力をしながら、将来に備えることです。