摂食障害は先進国に多くみられ、日本でも若い女性に急増して大きな問題となっています。主に思春期から20代の女性にみられますが、最近は男性にも増えています。
■摂食障害の種類
拒食症(神経性食欲不振症)
異常にやせてもまだ太っていると感じて、体重が増えることを強く恐れ、やせを維持しようとします。
過食症(神経性大食症)
食べたい衝動が抑えられず、短時間に大量の食べ物を食べますが、後でそのことを後悔して憂うつになったり、太ることを恐れて吐いたり下剤を使ったりします。
症状は人によって様々で、拒食症から過食症に移行したり、両方を周期的に繰り返したりすることも少なくありません。
■原因はストレス
摂食障害の発症には、ストレスを適切に対処する能力が大きく関わっています。進路や人間関係など思春期・青年期特有の挫折体験を乗り越えられない時、やせることに没頭すると辛さから逃れられるような錯覚に陥ります。また、過食はアルコールにも似て、食べている最中は嫌なことを考えないで済むという一時的な逃避の効果が得られます。
やせると自信を持てるような社会的風潮があり、挫折を感じた女性がダイエットに走りやすいことも、近年の摂食障害患者の増加を後押ししていると考えられます。
■体と心の症状
拒食症の約50%はダイエットがきっかけで発症し、他は過労や体調不良などで食欲不振になり、やせ始めてからは太るのが怖くて食べられなくなっていきます。しかし、約半数は食欲に負けて過食をし、過食の後吐いたり下剤を乱用したりします。そして、肥満への恐怖と飢餓との間で悪循環が生じ、次第に抜け出せなくなっていきます。
異常にやせたり、過食と嘔吐を繰り返したりすることで、体と心には次のようなことが起こってきます。
<やせ過ぎによる影響>
●体の問題…無月経、低血圧、貧血、うぶ毛の増加、便秘など。
体重が回復すれば改善しますが、長期に及ぶと脳が萎縮したり、妊娠に支障が出たり、骨粗しょう症の危険が高まります。
●心の問題…集中力や判断力の低下、情緒不安定、強い不安感など。
<過食・嘔吐による影響>
●体の問題…胃酸で食道があれて逆流性食道炎になったり、胃酸が歯と歯ぐきを傷め、後に総入れ歯になる人もいます。
●心の問題…大食中は何も考えない解放感があり、吐くと嫌なことが全て排除できるような錯覚があるのでやめられなくなります。抑うつ気分も起こり、自己嫌悪や罪悪感に襲われます。
■周りのサポートが大切
摂食障害の治療は、背後にある心の問題に気付き、ストレスに適切に対処する方法を学ぶために、カウンセリングを行います。病気の特徴を説明し、栄養指導や栄養療法で体重を増やすことから始め、体重が35〜40kgを超えてから、本格的に心の問題に取り組みます。
専門家が行う治療とともに、身近にいる家族などのサポートが大変重要です。摂食障害から回復した人の多くが、家族や周りの人が見捨てず支えてくれたことが大変ありがたかったといっています。
回復には年単位の時間が必要です。家庭が安心して休める療養の場になるよう、次のことを心がけ、ゆっくりあせらず病気と付き合うことが必要です。
●まずは当面のストレスを取り除いて休ませる
●食事と体重には口出ししない
●本人がほっとできる環境を整える
●甘えたい気持ちを受け止める
病気だと意識していない人も多く、治療を受けていない人が数多くいます。また、無理に食べさせられて体重が増えるのを恐れ、受診を嫌がりますが、進行すると脳や消化器の機能低下にもつながります。周囲が早めに受診させることが大切です。
「健康管理士ニュース」記事より
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