5月31日は、WHO(世界保健機関)が定める世界禁煙デーです。2008年は、若者がタバコの常習使用者になることを防ぐために、「若者へのタバコの売り込みをやめさせよう」というテーマが掲げられました。
■未成年者の喫煙を防ごう
わが国では、未成年者の喫煙防止のための取組みの一環としてtaspo(タスポ)が導入され、成人であることを確認できなければ、タバコを購入することができなくなりました。
このように未成年者の喫煙防止に重点が置かれているのは、未成年からの喫煙による健康被害が非常に大きいからです。20歳までの成長期に喫煙すると、心身ともに大人よりも悪影響を受けやすいことは明らかで、未成年で喫煙を始めた人は、成人になってから喫煙を始めた人に比べ、がんになりやすいという報告もあります。
タバコによる害はがんだけではなく、COPD(慢性閉塞性肺疾患)を始めとする呼吸器の病気、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの循環器の病気のほか、痴呆や不妊など多くの深刻な疾患の危険性も高くなります。また、顔のしみ、深いしわ、肌荒れ、口臭や歯ぐきの黒ずみや白髪の原因になるなど、美容面にも大きな影響があります。
日本循環器学会など9学会の研究班は、『タバコを吸うことは、ニコチン依存症と関連疾患からなる喫煙病』であり、喫煙者には「積極的な禁煙治療が必要」であると発表しています。未成年者の場合、多くは好奇心から、あるいは友人から誘われ「何となく」喫煙を始めています。喫煙による健康被害の怖さを認識することなく吸い始め、大人に比べてニコチン依存症になりやすいために、いつのまにかタバコがやめられなくなるのです。それだけに、未成年者の喫煙を防ぐには、周りの大人が果たす役割が大きいといえるでしょう。
■受動喫煙から気管支の病気だけでなく、中耳炎や虫歯まで
自分ではタバコを吸わないのに、そばで吸っている人の煙を吸わされている状態を「受動喫煙」といいます。受動喫煙による健康被害は深刻で、特に子どもは健康被害を受けやすいことがわかっています。
特に呼吸器系への影響は大きく、急性気管支炎や肺炎、喘息などを起こして発作の回数を増やす原因になります。これは、気道の感染防御機能である気管・気管支粘膜の線毛運動が妨げられ、異物が運び出されなくなるためです。
同じように、鼻や耳の線毛運動機能も低下するため、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)や扁桃肥大、中耳炎が起こりやすくなります。また、免疫力が低下するためかぜをひきやすくなったり、虫歯、発育障害、知能低下、低身長などの原因にもなります。
さらに、母親が妊娠中や出産後に喫煙する場合、乳幼児突然死、低体重児出生が確実に増え、白血病、小児がんが増える可能性があります。厳格に受動喫煙対策を指導した国では、乳幼児突然死が大幅に減っているという事実からも、受動喫煙との関係は疑う余地がありません。
■喫煙者の吐く息にも有害物質が
子どもの受動喫煙を防ぐために、家庭では、換気扇の下やベランダでタバコを吸っているという人を見かけます。しかしながら、そういった方法では子どもの健康を守ることはできません。というのは、喫煙者の呼気には発がん性物質などタバコの有害物質が多く含まれているからです。
例えば、ベランダでタバコを吸った後に室内に戻って子どもに話しかけた場合、子どもの周囲での有害物質の濃度が急上昇します。つまり、喫煙中だけでなく、喫煙後に吐く息の中にも有害物質が含まれているわけです。
また、台所の換気扇を回しながら、あるいはベランダに出てタバコを吸った場合、台所と隣接した部屋や隣の家のベランダには、喫煙者周辺とほとんど同じくらいの濃度の有害物質が到達していることもわかっています。換気扇の下やベランダでタバコを吸っても、受動喫煙の害を防ぐことはできないのです。
子どもを受動喫煙の影響から完全に守るには、親がきっぱりとタバコをやめる以外に方法はありません。家族の喫煙がゼロになれば、子どもたちの病気の多くを防ぐことができるのです。子どもの命を守るためには、分煙ではなく、禁煙=無煙環境が必要です。