昔は、栄養がなく役に立たないと考えられていた食物繊維は、今では第6の栄養素としての役割が明らかになっています。近年はますますその範囲や役割が広がっています。
■スポットライトを浴びた食物繊維
そもそも食物繊維は、五大栄養素のようにエネルギー源になったり、また様々な生命活動を潤滑に行うために関わっているビタミン、ミネラルとは異なり、役に立たない存在と考えられていました。
しかし、1970年代頃から食物繊維は、健康維持や疾病予防に関する効果があることが明らかにされ、「第6の栄養素」として注目されてきました。
当時食物繊維の定義は、「植物細胞壁成分で、人間の消化酵素により加水分解されずに残るもの」とされ、その範囲は植物細胞壁を構成しているセルロース・ヘミセルロース・リグニンなどといった植物性の非デンプン性多糖類、ガム質、粘質物、ペクチンなどの多糖類とみられていました。
実は、新たな研究などが進んでいることもあり「食物繊維」の定義はいまだ確立されているわけではないのです。食物繊維の分類も、一般的に私たちは、水溶性と不溶性に分けていますが、他にも植物起源・動物起源・微生物起源、天然物・人工合成物・化学修飾物などがあります。
■広がる食物繊維の範囲
現在厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2010年版)では、「食物繊維」は「炭水化物」の一部として、次のようにまとめられています。
「栄養学的な側面からの炭水化物のもっとも重要な役割はエネルギー源としてのものである。一方、炭水化物の一部ではあるものの、食物繊維は、エネルギー源としてではなく、それ以外の生理的機能による生活習慣病との関連が注目されている。食物繊維という名称は生理的な特性を重視した分類法によるものであり、上記の分類とは必ずしも一致しない。
しかも、食物繊維の定義は国内外また組織間で少しずつ異なっている。しかしながら、共通している特徴は、小腸で消化できないことである。必ずしも正確ではないが、通常の食品だけを摂取している状態では、摂取される食物繊維のほとんどが非でんぷん性多糖類であると考えてよいであろう。」
消化しにくい成分として、以前から知られている植物性の非デンプン性多糖類の他に、オリゴ糖や、動物性であるキチン(エビ・カニなどの甲殻類)やコンドロイチンなどがあります。
また、デンプンなどを湿熱加熱処理することにより、その一部が消化酵素のアミラーゼに抵抗し難消化性となったものがレジスタントスターチ。さらにこれまでは食物繊維は難消化性の糖質と考えられていましたが、そばや大豆などに由来するタンパク質のなかにも難消化性のレジスタントプロテインが存在することも注目されています。
他にもフルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、ポリデキストロース、難消化性デキストリンは、人工合成あるいは化学修飾物として開発された、食物繊維と類似作用がある成分です。
■食物繊維と類似作用物質を包括する「ルミナコイド」とは?
学会や組織単位で、また国によっても食物繊維の定義は様々なのが現状です。このような消化しにくい食品成分を、従来通りの「食物繊維」と呼ぶべきかどうかは意見が分かれているところです。
日本食物繊維学会では、食物繊維を含め、難消化性・難吸収性で、消化管で何らかの生理作用を持つ物質を、包括的用語として、「ルミナコイド(luminacoid)」という用語を提唱されています。
ルミナコイドの名称は、「lumen(消化管)+accord(調和する)+oid(の様な物質)」の意味が込められています。ルミナコイドには、従来の定義では該当しなかった糖アルコールやレジスタントプロテイン(難消化性のたんぱく質)なども含まれています。
■食物繊維はノンカロリーではなかった
私たちが、以前から食物繊維について思い込んでいたことで認識が変わったことがあります。例えば、食物繊維は、分解されずノンカロリーと考えられていましたが、小腸で消化吸収されずに大腸へ入った後、腸内細菌により発酵され、一部が短鎖脂肪酸に変換されエネルギーを産生することが明らかになっています。炭水化物(いわゆる糖質)は約4kcal/gのエネルギーを産生しますが、食物繊維は、0〜2kcal/gで、ただしその値は一定ではないと見られています。
また食物繊維はカルシウムやマグネシウムなどのミネラルを吸着して排泄すると考えられていましたが、それは過剰に摂取した場合と考えてよいようです。腸内細菌によって食物繊維が発酵を受けると、腸内のpHが下がってミネラルが溶けやすくなるため、逆に体内への吸収がよくなるのです。
■期待される食物繊維と類似作用物質の主な作用
食物繊維や類似作用のある物質について、主に次のような作用があるという研究や報告があり、健康維持や、疾病予防に役立つのではないかと考えられています。
●栄養素の吸収を緩やかにして糖代謝や脂質代謝を改善
水溶性食物繊維の摂取によって、食物に含まれる糖質の消化吸収速度が遅くなることで、食後の血糖値の上昇やインスリンの分泌を緩和し、糖代謝を改善。また水溶性食物繊維は血清コレステロール値を低下させる働きから、脂質代謝を改善する。
●排便・便性改善
不溶性食物繊維は、水分を吸収してかさが増えることで排便を促す。
●プレバイオティクス
水溶性食物繊維やオリゴ糖は乳酸菌やビフィズス菌の餌となり、腸内菌叢のバランスを改善し、健康維持に役立つ。
●消化管機能を刺激
脳への満腹感の伝達に関わるホルモンの分泌を刺激する。他に腸管を刺激して消化管ペプチドホルモンの分泌を促す。
●免疫機能を刺激
病原菌やウイルスの侵入を防ぐバリア機能や腸管感染を改善する。
●有害物質を軽減
便の通過時間が短縮されると毒素が留まりにくい、また有害物質を吸着して体外に排泄する。
などなど・・・今後も研究が重ねられ、新たな作用や成分が発見・開発されていくことでしょう。
■幅広い食品から、多様な食物繊維を
1947年頃の食物繊維の1日平均摂取量は27g程度でしたが、現在は15g程度(平成21年度国民健康・栄養調査)。日本人の食事摂取基準(2010年版)では、1日の食物繊維の目標量を男性は19g以上、女性は17g以上としていますが、20〜30代の男性は13〜14g、女性は12〜13g程度しか摂れていません。中でも若い世代では摂取量が少ない傾向があります。
特に穀類からの食物繊維の摂取が年々低下して、食物繊維の摂取量が減ったのは、米離れが進んだことが原因の一つではないかと見られています。もちろん、キノコ類や海藻類などにも食物繊維は多く含まれていますが、米のよいところは、主食として、1日に無理なく3回食べられることです。食物繊維不足では? と感じたら、主食に玄米、発芽玄米、雑穀などを加えるのもよいでしょう。
このように、食物繊維と類似作用を持つ物質には、様々な種類と働きがあります。これらの作用は、まだまだすべてが解明されたわけではありません。ですから、何か特定のものばかり偏って食べるのではなく、幅広い食品から多様な食物繊維と類似物質を摂取することが基本的に安全で、健康に役立つと思います。
また健康食品のように単一の食物繊維を過剰に摂取することは、下痢をしやすくなる、あるいは逆に便秘になるなどの健康を害する場合もありますから、気をつけましょう。
「All About」記事より
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