アルファ波という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。リラックスした状態で誰にでも見られる脳波の１種ですが、加齢によって変化しているのをご存知でしょうか。
■アルファ波ってどんなもの？
アルファ波は心・体に良い影響を与えるといった表現をされることがあります。特に市販されている商品には「アルファ波を出すから体に良い」といった表示が見られることもありますが、人体への影響はさておき、人為的な物質によってアルファ波を出すことは不可能です。勿論、音楽によっても直接アルファ波を誘発することはできません。これを踏まえた上で以下の記事をご覧ください。
■アルファ波を誘発する環境とは？
アルファ波はリラックスした状態で成人の脳波を測定してみると、誰にでも自然に見られます。いわゆる自然体といったところでしょうか、この状態で開眼・暗算・音刺激などの負荷を加えることでアルファ波は抑制されます。つまり脳に刺激が加わり、活発に活動を始めるとアルファ波は見られなくなります。このことを踏まえると、アルファ波を出すためには「いかにしてリラックスすることができるか」ということになります。究極的には以下の条件を揃えることができれば、ほぼ確実に誰にでもアルファ波は出現します。
・暗い部屋に入る
・目を閉じたまま眠らない
・何も考えない
・黙って静かに時間を過ごす
音楽を聴くことでリラックスできれば、その結果としてアルファ波が観測されることはあります（聴き始めてすぐにアルファ波が観測されるわけではありません）。ですから、ご自身がリラックスできると感じる音楽であれば、アルファ波を促すための音楽の種類は問わないことになります。かといって、刺激の強い曲や思わず口ずさんでしまう曲では、聴くことに集中してしまうのでアルファ波が出にくくなると考えられます。
■加齢による脳波の変化
アルファ波が体に良い、と言われることがあります。アルファ波があたかも健康を増進するような表現ですが、もっと正確に言うと「体がリラックスできて自然体を保っている状態だからアルファ波が観測される」ということになります。卵が先かニワトリが先か、という問答と同じようなことですが、医学的にはリラックス→アルファ波の順番が正しいと考えられます。
それでは、加齢による脳波について考えて見ましょう。多少なりとも個人差はあるのですが、人間は成長するに従って脳波が変化します。実は同じアルファ波であっても70才ぐらいまでは平均して９〜１０Hz、80才を超える頃には８〜９Hzと、加齢によって更にゆっくりとした波形になることが知られています。
生後からの変化では、新生児では脳波に不規則な活動が見られ、３ヶ月も過ぎるころには３〜４Hz（ヘルツ）の波形が見られるようになります。５才を過ぎるころにはシータ波とアルファ波が同等に出現し、７〜８才では一時的にアルファ波が優勢になります。15才を過ぎることにはほとんど成人の脳波と同じ波形となり、若年者特有の徐派が見られなくなって成人脳波となります。更には40才からは側頭部にシータ波が散発し、60才頃からはシータ波が増加します。健康な人では脳波検査をする機会はほとんどありませんが、加齢によって変化する脳波を測定して脳年齢の参考にするのも面白いかもしれませんね。
参考：代表的な脳波の周波数
デルタ（δ）0.5〜３Hz、シータ（θ）４〜７Hz、アルファ（α）８〜13Hz、ベータ（β）14〜30Hz：δ・θ波を合わせて徐波（slow wave）、β波は速波（fast wave）と呼ばれます。成人が覚醒しているときにはα・β波が見られます。
■アルファ波をコントロール
一流のスポーツ選手やヨガの達人ではアルファ波をコントロールすることができると言われていますが、実際のところ脳波をコントロールできるのではなく、いかに精神を落ちつかせてリラックスすることができるかがポイントのようです。ピンチ・チャンスのときにも動じることなく自身の力を発揮できること、それが本番に強いということです。オリンピックでは本番に弱いと言われ続けた日本人ですが、歴代のメダリストを見てみると納得できる結果かもしれません。日常生活でプレッシャーを感じる場面で、あなたはアルファ波を出すことができますか？
「All About」記事より
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